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サラジーナ 〜千夜一夜の風〜 〜3 クリリアント姫〜 |
サラジーナはクリリアント姫の前に腰をかがめていました。 姫はうす紫のベールで、ゆるやかにウェーブした蜂蜜色の長い髪を 包み込み、椅子に座っていました。椅子の足は象牙に花の模様の 彫りを入れてあり、椅子のクッションは可憐な花と孔雀の模様の刺 繍が入っていました。 「サラジーナとやら。今日からそちは私の召使の一人。それにしても そちの身なりのままでは…。誰か。誰か。」 呼ばれてお付きの女官長がきました。 「姫さま。お呼びで。」 「女官長。サラジーナの身支度を整えるように。たまにこういう姿を 見るのも面白いがしかし…」 「かしこまりました。姫さまのお付きとしてふさわしい姿に変えさせて まいります。」 初めは服を着替える事から、姫のお付きとしての夜が始まりました。 |
サラジーナが服を着替えている時お付きの一人が手伝ってくれまし た。 「私はメロディアンナ。主に歌う仕事をしているわ。」 「ありがとう。私はサラジーナ。姫さまは大変難しい方だと伺っており ますが…?」 「そうね時には難しいかもしれないわね。でもあなたなら大丈夫。姫 さまは外の世界に興味がおありでよく外をご覧になっておいでです。 王宮や城から外へ出た事が一度もないの。」 「え。一度も?」 「えぇ、そうよ。だから外からの風を感じさせる人をいつも求めておら れる。あなたのような…。」 「私のような?」 「そう。いつも外をご覧になって新しい人をみつけた時は瞳を輝かせ て喜んでおられるわ。姫さまにはお母さまがいらっしゃらないので、 女官長が母がわりの仕事を王様から言いつけられて…」 メロディアンナがそこまで話した時、女官長の咳払いが聞こえて、 二人の話はさえぎられました。サラジーナはあわてて身支度の残り をしました。着替える時でも、バラの石の首飾りは忘れずに誰にも 見えないように衣服の下につけました。 |
サラジーナはお付きの衣服に着替えて再びクリリアント姫のもとに戻り ました。クリリアント姫は窓辺に立ち、外を見下ろしていました。姫の部 屋は王宮の建物の中でも高い塔の上にあり、窓からは広い空と人々が 暮らす町が見えました。 「のう、サラジーナ、そちはここに来るまではどこに住んでいたのじゃ?」 と姫が尋ねました。「こっちの方角か?」と外を指さしました。 「はい、こちらのやや右の方側でございます。あの市場のあるあたりで ございます。」 「市場というのは色々なものを売っている所だな。おまえは何を売って いたのじゃ?」 「私はその日その日色々な店を手伝っていましたので、色々なものを 売った事があります。」 「何? その日その日色々な店を、か?」 「はい、そうでございます。私はこの国の生まれ育ちではございません ので、そうやって色々な店で働かせてもらって生きてきました。」 「何と。この国の生まれではないと。そういえばそちの顔の雰囲気は少 し西側の血筋のようなものを思わせるような…。ふむ、面白い。ジプシ ーの暮らしをしていた、と聞いたぞ。ジプシーというのはどういうような ものなのか、話してみよ。」 「はい、姫さま。」 その夜からサラジーナは退屈な生活をおくっているクリリアント姫の気晴 らしの為の、夜のお話相手としての仕事が始まりました。サラジーナはジ プシー仲間と生きてきた間に色々な町を渡ってきたのでお話相手として まさにうってつけでした。時にはメロディアンナと一緒にベリーダンスを踊 ってみせたりもしました。 |