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サラジーナ
〜千夜一夜の風〜

〜11 姫の反乱〜

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サラジーナは翌日クリリアント姫のお召しがあり、部屋へ向かいました。

サラジーナはほんの少しの間王宮を離れていただけでしたが、新鮮な気持ち

で歩いていました。

クリリアント姫の部屋に着き、しばらくすると姫が入ってきました。

見てみると姫は、今までにない髪型をしていました。

「サラジーナ、この髪型はどうじゃ?」と姫は言いました。

「大変美しゅうございます。」とサラジーナは深々と頭を下げて言いました。

「今までに見た事のない、まったく新しい、雰囲気でございますね。」

「そうであろう。これは海のむこうの国ではやっている形らしい。ちょっと真似し

てみたのだ。」

「はぁ」

「そこでは今、綺麗にまとめないで、わざとぼさぼさっとさせるのが流行してい

るらしいのだ。しかしこの女官長は…」と言って姫は横に立っている女官長を

ちらりと見ました。

「むむん、しかしながら姫さま」と女官長は口をはさみました。「このようないで

たちは、姫さまのような高貴なお方がするようなものではありません。これは

どちらかというと、下々の者のいでたちでございます。空の下、太陽光線をい

っぱい浴びて、日に焼けまくった者のような、汗を流して暮らす者のような…」

「この髪型のどこがそんな印象を与えるというのか」と姫は頬を膨らませなが

ら言いました。

「それはそのおくれ毛でございます。姫さま、髪はきっちりとまとめておかなくて

はなりません。そのような野生のいでたちでは…」

女官長も負けてはいません。

「何を申すか、女官長、そなたの考えは古いのじゃ」

サラジーナは、目の前でくりひろげられる姫と女官長のやりとりを聞いて、何故

か、ほほえましいものを感じていました。

姫と女官長がやりあいをしているのを聞いて、王のお付きの大臣が入ってきま

した。「これこれ、何を騒いでおるのか」

大臣は姫の姿を見て、あっと驚き、すぐさま王をつれて戻って着ました。

王も姫の髪型を見て驚きました。

「クリリアント姫っその頭は…どうしたのじゃ? おぉ姫付きの美容係を呼べ!」

美容係が呼ばれ、大騒動となりました。

姫は自分が頼んでこの髪型にしてくれ、と美容係に申し付けたのだと言いはり、

王はこんなとんでもない髪型にしてしまった美容係は首切りだ!とどなり、

姫は、とんでもない、この美容係は美容大臣に任命する、と言い出し、王と大臣

と姫と女官長は いっせいに大きな声でわめいたり、どなったりしました。

一同は、わめいたり騒いだり部屋を走り回ったりして、本当にのどが痛くなって

もう声も出ない、走る力も出ない、という頃になって、それぞれが自分の部屋へ

戻っていきました。

サラジーナはそのようすを ただ ニコニコしながら見ていました。

もしかしてクリリアント姫が王にさからったり喧嘩をしたのは 初めてだったのか

もしれません。少なくとも、サラジーナが王宮に来てから見たのは初めてでした。

 

サラジーナは姫の部屋から帰る道すがら いつだったか姫がずっと決められた

規則に縛られている、と言っていたことを思い出しました。

「そういえば、綺麗だけど縛られた生活、飛べない籠の中の鳥、だとおっしゃって

いた事もあったかなぁ。ふふ」

部屋に戻ると、一通の手紙がサラジーナ宛に届いていました。クリリアント姫の

刻印が押してありました。

「サラジーナ・クリリアント姫付語り部

この者は王宮の中にも外にも 留まるを 許す。

パンプキン花の135年 種の月 パンプキン国・クリリアント皇女」

サラジーナはクリリアント姫のお付きの仕事を始めてから、ずっと王宮内に暮らさ

なければなりませんでしたが、これからは王宮の外へも出かける事ができるよう

になりました。

12へ続く

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