Copyright(C)2001-2004 Yumeringo's "Iihi Tabidachi"&"Yumeringo's World" All rights reserved
作者の承諾なしに作品の一部ないし全てを転用引用する事を 固く禁じます。

サラジーナ
〜千夜一夜の風〜

〜15 秘密のバラ〜

サイトマップへ サラジーナの目次へ 14に戻る

 

ある日サラジーナは王宮の庭を歩いてバラ園の近くまで来ました。

ほのかなバラの香りがサラジーナを誘いました。白ばらがひとつ咲いて

いるのが見えました。サラジーナはそのバラに近づいて香りを楽しみま

した。するとサラジーナのすぐ左にあった白いバラのつぼみがみるみる

うちに大きくふくらんで花開きました。

「あら、こんな風に開くところを見たのは初めてだわ。とっても綺麗。」

サラジーナは微笑みながら開いたばかりのバラに手を伸ばしました。

するとそのまた左側にあったつぼみが咲いて、次から次へと咲いて

いきました。

サラジーナは自然にバラの咲く方向へ足を運びました。

段々とバラ園の奥へと進んでいきました。

バラ係りのローズソンがいつもバラを丹念に育てているのですが、その

日はローズソンの姿は見えませんでした。

バラは次々に咲いていき、どんどんとサラジーナをバラ園の奥へ誘い

ました。バラと共に歩いていくと、一軒の家が見えました。それはローズ

ソンの家でした。その時ローズソンの歌声が聞こえてきました。

 

♪サラよサラ きみはうつくしい

 サラジーナ こんなにも甘い ぼくの

サララララララ〜〜 サララララ〜

ラララララ〜 ラララララララ〜♪

 

サラジーナは思わず立ち止まり、赤面してしまいました。

どうしていいのかわからなくなり、家の前でしばらく立っていました。

その間もローズソンの歌声はくり返しきこえてきました。

嬉しいやらはずかしいやら、どうしようかと考え、背を向けて王宮の

方に帰ろうとしました。すると突然突風が吹いて、ローズソンの家の

扉が開きました。

 

「凄い風だなぁ」と言いながらローズソンは扉を閉めようとして戸口に

あらわれました。そこで家の前につったっているサラジーナをみつけ

ました。

「サラ・・・ジーナさ・・・ん。なぜこんな所に。」とローズソンは驚きまし

た。そして「あ、もしかして、いまの歌を・・・・・・」とサラジーナを見なが

ら小さな声で聞きました。

サラジーナは何も答えられず、ただじっと立っていましたが、そのうち

にローズソンの方をしっかりと向いてうなずきました。

 

ローズソンはサラジーナにつめより、腕をつかんで家の中へつれてい

きました。

ふたりはそれから後一言も話さず、互いの腕の中にいる愛しい人を

しっかりと抱きとめました。

それからどれくらいの時間ふたりはいっしょにいたでしょうか。

太陽がまるい空をゆっくりとのぼってしずんでしまうまでいっしょにいま

した。その日のバラはいつもより甘くかぐわしい香りを放っていました。

その訳はふたりの他に誰も知りませんでした。

16へ続く

inserted by FC2 system