「サラジーナ」絵本 その1

夜の魔人 3ページ目

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魔人は夜と朝のあいだのところまで月を運びました。

そして月を朝のほうへ押してみました。すると

月は夜空にうかぶ時と同じように 朝の空にも浮かぶではありませんか!

 

夜の魔人は その月にひょいっと飛び乗ってみました。

月のまわりの空はだんだん明るくなってきました。

 

すきとおるような青い空のまんなかに きれきらと金色にかがやく太陽がありました。

太陽はらんらんと明るくあたりを照らしていました。空を飛ぶ鳥たちも嬉しそうに歌声をあげていました。

「おぉ、鳥というのはこんなふうに飛ぶんだ。初めて見たなぁ!」と

月のかげに隠れた魔人はそっと見ていました。

 

そこへ風がふいてきました。きらきらとした光が風の先頭になって

こちらへやってくるのが見えました。どうやらそれが太陽の娘のようでした。

すきとおるような青い空の肌の娘でした。

黄金色の髪はやわらかにウェーブして 風の動きにあわせてなびいていました。

髪の先からは 小さな花がこぼれ落ちていました。

 

太陽のむすめは いつもみあたらない月が

昼間のそらに浮かんでいるのに気づきました。

こっちへやってきました。

太陽の娘は ひるまの月のところまで来ると、

そおっと月にふれて 少しずつ足をふみいれてみました。

 

そこでばったりと夜の魔人と出会いました。

「やぁ」

夜の魔人はずっとあこがれていた太陽の娘に会えたので

それだけ言うのがやっとでした。

「あなたはだぁれ?」

太陽の娘が聞きました。

「わたしは夜の魔人。」

魔人が答えました。

「わたしは太陽の娘。いつも青空の風に乗って仕事をしているわ。

あなたはここで何をしているの?」

太陽の娘はまっすぐ夜の魔人をみつめました。

娘の瞳は太陽のようにまぶしく輝いていました。

魔人は すこしはずかしかったのですが、思い切って言ってみました。

サラジーナ絵本「夜の魔人」4ページ目に続く

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